1. 内見時の違和感、その正体は
新居探しの中で出会った、少し年季の入った戸建て住宅。
案内してくれたのは、やや頼りなさげな年配の方。
物件について質問しても、明確な回答は返ってこず、内心「大丈夫かな…?」と不安を覚えました。
後に分かったのですが、この方こそが大家さん。
従来は不動産業者を通していたので、物件の詳しい状態について、ご存知なかったようなのです。
そして、今回は不動産業者を介さない“直接契約”でした。
これまでの賃貸では、必ず不動産屋さんを通していた私にとっては、初めての経験でした。
今振り返ると、この時から“兆し”は始まっていたのだと思います。
2. 「片付け中」と言われたキッチンのまさかの現状
内見時、物件はかなり荒れていました。
和室の畳は古く、踏むと、所々ブヨブヨ。
窓の周囲には雨がしみ込んだような跡。
床と壁の境目には、隙間。
崩れた壁から、コンセントの浮き出し。
・・・特にキッチンは、油汚れや埃が目立ち、正直「このままじゃ住めないな」と感じるほど。
でも、大家さんから「今は、片付け中」と説明されました。
そして
エアコンが、1階と2階に付いていること
トイレにはウォシュレットが付いていること
インターネット接続の差込口があること
等を見せて回ってくれました。
私は家族と相談の上、「引越しまでには綺麗になっている」と信じて契約を進めました。
ところが、引越し当日。
扉を開けた先に広がっていたのは、内見時に見たままの汚れたキッチンでした。
私は呆然と立ちつくしました。
その後も、次々と不具合が判明しました。
キッチン戸棚の中にはゴミがそのまま
故障しているウォシュレットはボタンを押すと、水の代わりに悪臭が出る
エアコンは冷風が出ない1997年製
差込口のあったインターネットは、スピードが出る区域外
・・・等々
大家さんが対応してくれたのは、故障しているウォシュレット。
暖房機能だけの、シンプルな便座に交換してもらいました。
自分達で行ったのは
ゴミの処分、エアコン買い替え、まともなスピードが出るインターネット新設等。
中でもキッチンの清掃について、困りました。
何度かお話させていただく中で、見えてきた、大家さんのお考えは、次のようなものでした。
事前に清掃業者に、清掃を依頼した。
清掃業者からは「これ以上綺麗に出来ないほど掃除済」と、報告を受けている。
だから、これ以上何もしない。
私は、驚きでいっぱいでした。
入居時、キッチンに、掃除の痕跡は、ありませんでした。
手伝いに来てくれた友人達も、その様子を見ています。
でもその事を、明らかに伝える方法がありませんでした。
自分達で掃除を始める前に、証拠写真等を、残しておくことに、思い至らなかったのです。
私は納得がいかない気持ちと、やり場のない怒りや悲しみでいっぱいでした。
3. 修理業者の“間違い訪問と修理”から感じたこと
そんなある日のことです。
故障している設備の修理を、いつお願い出来るか、相談中の業者さんがいました。
この業者さん、まだ修理日時も何も決まっていないのに、突然やって来ました。
戸惑う私達。
それでも修理業者さんは、修理を完了させて、帰りました。
それから数時間後、その業者さんから電話が入りました。
「すみません、別の家と間違えて訪問してしまいました」
そう言って謝罪がありました。
その時、ふと頭に浮かんだのです。
「大家さんが依頼したという清掃業者も、もしかすると、どこかの別の家を掃除したのでは…?!」
この“もしかして…”の仮説に私は救われました。
「誰かがウソをついている」のではなく、「ただの手違いだったかもしれない」。
そう思えたことで、怒りや悲しみが、ふっと軽くなったのです。
4. 大家さんとの関係に変化が
その後、設備の故障が、夜に起きた事がありました。
一般の業者さんに電話すると、電話口で、私に出来そうな修理方法を誘導してくれました。
その通り進めながら、状況を説明すると、やはり訪問修理が必要という結論に達しました。
「まずは大家さんに連絡してみてください。
それで断られたら、明日以降対応します」とのこと。
それで大家さんに連絡してみたところ、すぐに対応してくれました。
この時、本当に助かった事を機に、大家さんへの見方が変わっていきました。
今では「直接契約だったからこそ、素早く対応してくれた」と思え、感謝しています。
5. 不動産屋なしの契約で学んだこと
この経験から、いくつかの教訓を得ました。
- 説明が曖昧な場合は要注意
「片付け中」「掃除予定」等と言われても、それが“どの範囲”なのかを明確に。 - 状態の記録を残す
写真や動画で、内見時や入居時の状態を記録。
後から「言った・言わない」の防止に。 - 契約内容は書面で明文化
不動産業者を介さない場合は特に、内容を文書で交わしておくことが重要です。 - 第三者の目は重要
仲介者がいないので、チェック機能が働きません。
信頼できる人に同席してもらうのも手です。
6. まとめ:直接契約のリスクと向き合うために
直接契約は、大家さんと近い距離でやりとりできる分、対応が早いというメリットがあります。
しかしその分、トラブルが起きた時、責任の所在が曖昧になりがちで、リスクも大きいと痛感しました。
どんな契約方法であれ、重要なのは「確認」「記録」「明文化」。
そして、もしトラブルが起きても、
「相手を責める」よりも「どう受け止めて、どう前に進むか」に意識を向けることで、
心が救われることもあるのだと、今回の経験から学びました。
これから家を借りる人
今まさにトラブル発生中の人
もう何年も前の痛みとして残っている人
そのような方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。

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